mixi engineer blog

*** 引っ越しました。最新の情報はこちら → https://medium.com/mixi-developers *** ミクシィ・グループで、実際に開発に携わっているエンジニア達が執筆している公式ブログです。様々なサービスの開発や運用を行っていく際に得た技術情報から採用情報まで、有益な情報を幅広く取り扱っています。

OpenStackとLXCを導入した話

こんにちは、運用部 アプリ運用グループの清水です。Golang鋭意勉強中です。

今回は、SNS「mixi」に限った話ではなく、ミクシィ社全体として利用している仮想環境について紹介したいと思います。パブリッククラウドも一部のサービスで利用していますが、今回は、自社で運用している仮想環境にフォーカスして書いてみようと思います。

今まで利用してきた仮想環境

今まで利用してきた仮想環境というと、手作業で構築したKVM(Kernel-based Virtual Machine)環境が中心でした。手作業といってもある程度手軽に構築できるように、シェルスクリプトとCobblerでVMを構築できるようになっています。構築の流れは以下のとおりです。

  • CobblerにVMのIPやホスト名などをスクリプトで登録する。
  • KVMのホスト上でスクリプトを実行(koanコマンドでCobblerと連携してVMをセットアップ)

VMの数が少ないうちは、この方法でも問題は大してありませんが、VMが増えてきたり用途が多様化してくると、VMの管理や物理障害時の対応が非常に面倒になるという課題を抱えてきました。

続きを読む

systemdを本番運用してわかったこと

こんにちは、運用部 アプリ運用グループの清水です。モンスト仲間募集中です。

以前、Fedora 8からFedora 17への移行のお話を書きました。Fedora 17ではsystemdがデフォルトで使われています。そのsystemdを本番環境で運用して1年以上が経ち、様々な経験をしてきました。systemdの環境で知っておくと役に立つと思われることについていくつか紹介したいと思います。

まずは、systemdの概要について簡単に紹介します。

続きを読む

mixiのサーバOS移行のお話 - ビルド&Kernel編

こんにちは。年末と年度末になるとブログを書きたくなる運用部アプリ運用グループの清水です。

気づけば前回の記事から3ヶ月が経過してしまいました…

今回は、ビルド&Kernel編と題して、Fedora 17向けにおこなったパッケージのビルドや、KernelのConfig、TCP周りの変更点について紹介したいと思います。

パッケージのビルド

OSが大幅にバージョンアップすると、依存しているライブラリに大きな変更が入ったり、RPMの仕様変更もあるため、Fedora 8時代のパッケージのリビルドなど、多くのRPMパッケージを作りなおさなければなりません。

mixiでは、Fedora標準パッケージとは別に150個以上のパッケージを、

  • configureなどビルドオプションを変える
  • Fedoraで提供されないパッケージを作る
  • ディストリビューションに依存しない構成のパッケージを作る(あとで紹介するPerlなど)

といった場合に作成しています。

ビルドは、ビルド専用のマシンでrpmbuildをおこない、作成されたrpmをmixi向けのyumリポジトリにコピーしてcreaterepoを実行、各サーバからyumで取得できるようにする、といったごく一般的な方法をとっています。自作のrpmは、releasesやupdatesとは別に用意したextrasディレクトリに格納しています。


f:id:mixi_engineers:20150508200550p:plain


それらのパッケージを作る上で直面した問題の一部を紹介したいと思います。

gcc 4.7.0でのビルド

Fedora 17で標準で用意されるgccのバージョンは、4.7.0です。Fedora 8で使っていたgccのバージョンは、4.1.2なのでかなりの差分があると言えます。

Cのソースコードをコンパイルする時、gccの新しいバージョンだと、例えば、#includeでヘッダファイルを足さないとコンパイルが失敗することが多々ありました。そのたびにパッチを作成してコンパイルを通しています。gcc以外にもautomakeやautoconfもバージョンアップしたことで記法も一部変わったりするので要注意です。

公式な情報として、

Porting to GCC 4.7

というサイトがあるので、gcc 4.7に移行する場合は参考にすると非常に便利です。

MySQL(Percona Server)

mixiでメインで使っているデータベースサーバは公式のMySQLではなく、Percona社がMySQLを独自に改良したPercona Serverを採用しています。Percona Serverについての説明は、ご存じの方も多いと思うのでここでは省きます。もし知らないという方は、

公式のMySQLとの機能比較ページ
http://www.percona.com/doc/percona-server/5.1/feature_comparison.html

がありますので、こちらをご参考ください。

残念ながら、Percona ServerはFedora 17向けのバイナリパッケージはありません(Fedora 19ではMariaDBが標準採用という方向のようですが…)。そのため、Fedora 17の環境では、Perconaから入手した5.1系のSource RPMをリビルドしています。しかし、gcc 4.7.0では、同梱されているHandlerSocketのビルドのところで通らなかったので、パッチを作ってビルドしていました。

現在、本家でこの修正は行われ、Percona Serverの新しいバージョンで取り込まれてビルドが問題なく通るようになっています。

Ability to compile HandlerSocket under a gcc-4.7
(commit

Perl

ご存知の通り、mixiではPerlがメインの言語です。ここでは深くは触れませんが、Fedora 17への移行にあわせて、Perlのバージョンアップも実施しました。5.8系から5.14系に変わり、コード側の対応もおこないました。今後はOSのPerlバージョンに依存しないように、独立したディレクトリを使うように構成したPerl関連の独自のRPMを用意しています。
(きっとこのあたりの詳細は誰かが記事にしてくれると期待して…)

Kernel

Fedora 17の標準のカーネルバージョンは3.3.4。Fedora 17のパッケージ群は、日々バージョンアップされ、updatesレポジトリにどんどん新しいバージョンのKernelが置かれていきます。(この記事の執筆時は3.8.3まで上がっていました)

mixiでは、サーバを安定的に運用するために、ある時点のupdatesレポジトリのスナップショットをとり、それをある期間使い続けるようにしています(問題のあるパッケージが発見された場合を除く)。

Kernelにおいても、ある時点の3.3.4以降のバージョンを採用していますが、標準のビルドそのままに使うことはしていません。というのも、標準Kernelのバイナリは、デスクトップ向けOSという位置付けのために、非常に多くのConfigが有効化された状態でビルドされています。

これでは、サーバ運用上、余計なConfigが多いため、必要最低限のConfigとハードウェアに合わせたConfigを選択してリビルドして使っています。主には不要なドライバの削除、組み込む必要のないファイルシステムのモジュール化、マシンのCPUに合わせたConfig、使わないネットワーク系の機能の削除など。これらは、複数のKernel有識者によるKernel Configレビューをおこなって選定しています。

KVM

KernelのConfig選定にあたって問題に直面したこともありました。たとえば、仮想環境用に、KVM(Kernel-based Virtual Machine)を使うため、make menuconfigで

Virtualization -> Kernel-based Virtual Machine (KVM) support

を有効にして、Fedora 17におけるKVMの動作検証をおこなっていたところ、KVMと密接な関係にあるlibvirtdがデッドロックする問題に遭遇しました。

新しいlibvirtdはLXC(Linux Containers)にも依存しているようで、KernelのConfigにLXC関連のものを追加したところ、一切デッドロックしなくなりました。

追加したConfigは以下の箇所。

General setup -> Namespaces support
Networking support -> Networking options -> QoS and/or fair queueing -> Control Group Classifier

TCP周りの改良

ビルドの話ではありませんが、Fedora 17にしたことでKernelに取り込まれた新機能の数々を使うことができるようになっています。


最近のKernelではTCP周りの改良がたびたび入るようになりました。大半はConfigで制御するものではなく、Kernelのコードに取り込まれています。代表的なものについて以下に紹介したいと思います。

Kernel 3.0

tcp: Increase the initial congestion window to 10.
(commit)


輻輳ウインドウサイズの初期値のデフォルトが10へ変更になっています。これにより、スロースタート開始時から最大10パケットをまとめて送るようになりました。これは、Kernel 2.6系も2.6.39から、RHELは6.2からデフォルト値が変わっています。

f:id:mixi_engineers:20150508200538p:plain

参考:
Tuning initcwnd for optimum performance
http://www.cdnplanet.com/blog/tune-tcp-initcwnd-for-optimum-performance/

Increasing the TCP initial congestion window
https://lwn.net/Articles/427104/

最近のクライアントOSではRWIN(receivers advertised window size)は65,535バイトに設定されていることが多く、初期に10パケット送られても十分に受け取れるケースが増えています。ただ、モバイルのネットワークなどのパケットロスが起きやすい環境では再送が増える場合もあります。mixiではデフォルト値である10を使用しています。この値は、ipコマンドで動的に変更することができます。

コマンドの例:

sudo ip route change default via x.x.x.x dev em1 initcwnd 3

 

Kernel 3.1

tcp: RFC2988bis + taking RTT sample from 3WHS for the passive open side
(commit)


再送タイムアウト値であるRTO(retransmission time out)の初期値が、3秒から1秒へ変更になっています。これにより、より早いタイミングで再送が行われることになり、パフォーマンスアップを図っています。ただし、SYN、SYN-ACKが再送された場合は、従来の3秒のタイムアウトにフォールバックされます。

また、3way handshakeにおけるRTT(round trip time)をサンプリングして、その値をデータ転送フェーズでのRTO(retransmission time out)初期値に利用するようになりました。

さらに、3way handshakeで再送が起きた場合には、データ転送フェーズ開始時の輻輳ウインドウサイズの初期値を1にして、さらなる再送が起きにくいようにしています。

Kernel 3.2

Proportional Rate Reduction for TCP.
(commit)


Proportional Rate Reduction (PRR)という仕組みがKernel 3.2で導入されました。

再送が発生した場合に輻輳ウインドウサイズの半分のサイズをssthreshとして記録し、それをスロースタートの開始値とするFast Recoveryというものが従来からありますが、このFast Recoveryが発生した際に、送信レートを調整し決定するアルゴリズムがPRRになります。

PRRは、再送時におけるウインドウサイズの削減をし過ぎないように、輻輳制御アルゴリズムによって決定されたウインドウサイズにより近づけるようすることで、送信データ量の精度向上につながります。


上記の3つの機能は、実際にmixiのサーバで有効になっています。

以降のKernel

この他にも、Googleが提唱する"Make the Web Faster"の一環で、Kernel 3.5でTCP Early Retransmit、Kernel 3.6でTCP Fast Openが採用されています。少しだけ触れておこうと思います。

Kernel 3.5

TCP Early Retransmit
(commit 1 2 3)

未処理のパケットが3つ以下の場合、Duplicate ACKの閾値(dupthresh)を減らすことで、Fast Retransmitを発生させます。これによりパケットロスからの回復を早め、結果としてレイテンシの改善につながります。特にスケールの大きいWebサーバでは、パフォーマンスに大きな効果をもたらします。

より詳細な仕組みと効果については、以下のGoogleの研究者による論文(section 6)に掲載されています。

Proportional Rate Reduction for TCP
http://research.google.com/pubs/pub37486.html

Kernel 3.6

TCP Fast Open
(commit 1 2 3 4 5 6 7)

同一ホストからの毎回のリクエストごとに通常の3way handshakeをおこなわないことで効率化を図っています。

1回目のhandshake時に、クライアントはサーバをcookieリクエスト、サーバはソースIPアドレスをもとに作成したcookieを発行します。

以後のhandshake時は、クライアントはSYNパケットにcookieとデータをのせてサーバに送信。サーバはクライアントからのACKを待たずにレスポンスを返します。

これによってhandshakeにかかる時間を削減し、パフォーマンス向上を図る仕組みとなっています。これは、クライアントとサーバの両方に実装が必要になります。

参考:
TCP Fast Open: expediting web services
http://lwn.net/Articles/508865/

まとめ

Fedora 17への移行に際して、さまざまなパッケージをビルドしてきました。コンパイラや依存するライブラリによって、いままですんなりビルドできていたものが通らなくなることもあります。発生したエラー内容の調査、gccのサイト等で情報収集等をおこない、必要に応じてコードやspecを修正して対処してきました。

また、今回採用したKernelでは、従来のKernelにはなかった様々な機能が追加されています。mixiのようなWebサービスでは、特にネットワーク周りの変更点に気を配る必要があり、変更内容についても、なるべく理解を深める必要があると考えています。tcpdump+wiresharkによるパケットの流れを確認することも欠かせませんでした。

次回予告

次回は、cobblerによるOSインストールについて紹介したいと思います。お楽しみに!

mixiのサーバOS移行のお話 - 前回補足&インストール編

こんにちは。新しもの好きが集まる運用部アプリ運用グループの清水です。

前回の記事では、多くの反響をいただきました。ありがとうございます。
Twitterや、はてブのほとんどのコメントを読ませていただきました。
みなさんのOSの宗派が垣間見えた気がします。

さまざまなコメントをいただいていた中で、よくある代表的なコメントについて、改めてこの場を借りてお答えしたいと思います。

2012年12月28日追記:

以下のQAにつきまして、いわゆる"ネタ"として書きましたが、誤解を招き、不適切な表現で不快な思いをされた方々へ深くお詫び申し上げます。
また、QAの一部に関わるところですが、OS標準のパッケージを否定するつもりは全くございません。 Linuxを安心して使うことができるのは、Linuxディストリビューションに携わっているデベロッパーの方々の素晴らしい活動や成果によるもの、というのが揺るぎない事実であると認識しております。 弊社のシステムの都合で、一部のパッケージをリビルドして運用しているということを、あえて別の表現で書いたことで、誤解を招いてしまいました。 重ねて深くお詫び申し上げます。

 

続きを読む

mixiのサーバOS移行のお話

はじめまして、運用部アプリ運用グループの清水 勲です。
2011年8月に入社して以来、はじめてエンジニアブログを書きます。

運用部では、日々、mixiを支えるサーバやネットワークを管理、運用しています。
今回は、サーバで使用しているOSの移行について、何回かにわたって紹介したいと思います。

はじめに

突然ですが、mixiで採用しているサーバのOSはなにかご存知でしょうか?

過去のブログ記事でもあまり紹介していなかったと思います。

続きを読む